研究紹介 (Our Research Projects)




ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)は貯蔵脂質であるトリアシルグリセロール(TAG)生合成の最終段階を触媒する律速因子である。


酵母マイクロソームアッセイ

酵母に各種のDGAT1遺伝子を導入・発現・培養して膜結合型タンパク質をマイクロソーム画分として採取し、前駆物質を与えてTAG合成活性を調べた。


植物にDGAT1遺伝子導入したらどうなるか、モデル植物であるシロイヌナズナで調べたところ、酵母発現実験と同様の傾向がみられた。


種子油の脂肪酸組成

16:0, パルミチン酸; 18:1, オレイン酸; 18:2; リノール酸; 18:3, α-リノレン酸; 20:1, エイコセン酸


タバコの葉での異所的一時的な発現実験であるが、DGAT1と脂肪酸合成促進の転写因子であるWRI1をそれぞれ単独で発現させた時より、同時に発現 (comb.) の方がはるかにTAG含量が高くなった(相乗効果)。


WRI1遺伝子をシロイヌナズナとヒマから単離し、シロイヌナズナに単独導入した結果、ミュータントでWRI1活性があることはわかったが、野生型への導入ではTAG含量は少ししか増加しなかった。


元々ベルノニアDGAT1高発現系統の油脂含量が高いので、WRI1の効果がどれくらいあったのか、判断は難しい。


WRI1単独高発現体、ベルノニアDGAT1との共発現体、ともに、シロイヌナズナWRI1高発現が脂肪酸組成に影響を与えているように見える。


 

 

2021年度 進行中のテーマ

 

 

 

(1) DGAT1:シロイヌナズナに種々のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子(DGAT1)を導入し、種子油含量と脂肪酸組成に及ぼす影響を調べた。ベルノニア、ダイズ、ヒマ、シロイヌナズナのDGAT1高発現体を作出し、それぞれに違う傾向があることを確認した。→WRI1高発現体との共発現実験へ。

 

(2) 酵母による一時的発現試験(より早く結果が得られる):上記の遺伝子に、ヒマワリ、ジャトロファ、ゴマのDGAT1遺伝子を加えて酵母で発現させて効果を調べたところ、TAG合成能に関して2つのグループに分かれた。→2つのグループ間で異なるアミノ酸残基を特定し、アミノ酸置換実験TAG合成能が変化するかを調べた。その結果、ダイズ、シロイヌナズナのDGAT1は1アミノ酸置換でTAG合成量が飛躍的に増加した。→その作用機構について更に詳細調べる。

 

(3) WRI1:ヒマ、シロイヌナズナのWRI1をシロイヌナズナ導入したところ、T3世代ではわずかではあるが油脂含量が増加。別のプロモーターや、WRI1欠損ミュータントに導入した形質転換体でWRI1の働きを調査中。

 

(4) 相乗効果DGAT1WRI1を同時に高発現させた時(二重形質転換体)の相乗効果を調べる。交配によるシロイヌナズナ二重形質転換体は作出済み。交配によらない共発現体を作出予定。